新黒沢 最強伝説、水をひたすら運ぶことに執着するひねくれ男こじえもんの章、ビックコミックオリジナル第14号では引き続き、彼をめぐる話が続いている。今回は暑さの中ペットボトルの水を運ぶコミュ障のひねくれ男こじえもんの背中を眺めながら、かれの過去の回想、とその人生を想う黒沢のお話し。
この新黒沢ホームレスの章はとてもよいと想う。
明らかにコミュニケーション能力に障害のある男こじえもん、しかし彼は自分の障害を言い訳に何かに挑むこともなく、また唯一挑んだ板前の修行も辛くなって逃げ出した男だった。背中を見つめながらその人生を想う黒沢。うだるような暑さの中、猛烈に重いペットボトルを背中にしょいながら、黒沢はこじえもんの「負け犬」の人生をおもい涙する。
福本先生のメッセージは、一見すれば何もせず人生から逃げるな「挑め!」と読めないこともない。
けれどそうなんだろうか?
負け犬の人生に涙する黒沢はやはりどこまでも温かい。その涙こそ福本先生の涙でもあるのではないだろうか?
人の運命、人生の成功と失敗なんて所詮揺蕩っている。
大成功の人生だって、自らに責任のない地震や火事で吹き飛んでしまう可能性だってあり定まってなどいない。
そんな中にあって、挑戦しなかったからといって、失敗したこじえもんを笑うことなど誰ができようか。今の成功も偶然の産物であり、失敗もまた同じである。成功した地点に幸せがあるとは限らず、失敗した地点に不幸せがあるとは限らない。
今回のこじえもんをめぐる黒沢の視点は人間への人生への暖かさがある。そこに僕は宮沢賢治を見たおもいですらあるのだ。