アマプラで映画視聴232作品目は「ザ・メニュー」でした。個人的レーティングは8.5/10です。アニャ・テイラー=ジョイとニコラス・ホルト、最高すぎる!どちらもかなり好きです。アニャ・テイラー=ジョイはラストナイトインソーホーもよかったです。見るたびに印象に残る女優。ニコラス・ホルトも演技がすべて計算されつくされている感じがしてすごい。ブラックコメディーでもあり、ホラーでもある本作、ぜひ見てほしいです。映画って本当に面白いと思える映画です。
孤島に佇むレストランを訪れた若いカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。そこではシェフ(レイフ・ファインズ)が極上のメニューを用意している。しかし、レストランのゲストたちはこのディナーに衝撃的なサプライズが待ち受けていることに気づくのだった…。脚本 セス・レイスとウィル・トレイシー、監督 マーク・マイロッドが贈るダーク・コメディー。
ネタバレも含みつつ解説します。陸から離れた隔離された島にある予約を取るのが困難な最高級レベルのレストランで繰り広げられる物語。冒頭から不穏なシーン連続です。一癖も二癖もある客の中でも最初から異色なのは、アニャ・テイラー=ジョイです。恋人のニコラス・ホルトに連れてこられているだけで最初からこの高級レストランに乗り気ではない。そして冒頭からところどころおかしなところを感じさせるレストランなのですが、そのおかしさに気づくのも彼女だけです。そして「芸術」とも言える料理のコースの幕があける、ニコラス・ホルトは料理のことで頭がいっぱい、恋人のことなどまるで眼中にないという様子。一品目。シェフの柏手で一堂が沈黙、食べる前にシェフの蘊蓄がはいります。なんだかよくわからない料理です。二品目はなんとパンはなく、パンに塗るものだけがほんの少しずつ出される。ここで客とちょっと揉めますが、客にやたら高圧的なお店側の姿勢が少し明らかになります。そしてトイレにいったアニャにシェフが問い詰める。実は二人は恋人ではなく、アニャはたまたま連れてこられた娼婦なのです。
次のチキンとタコス、これが異様な感じ。なんと不倫だったり、マネーロンダリングだったり顧客の悪事の秘密がタコスに描かれている…。そして次の料理、ここで事態は決定的になります。内容はいいませんが、ほとんどの人がここでこのコース料理が最早まともではないことに気づきます。ところがニコラス・ホルトだけがまったく意に介さず料理に夢中…。そのあとはシェフの狂気に客人たちが付き合わされることになります。
解説すると、この映画は料理に命をささげてきてついにはおかしくなったシェフ(達)が、実は料理のことなど一つもわかっていない強欲なブルジョアどもに制裁を加えるという話です。最後にアニャが頼んだ9ドルのチーズバーガーにシェフが全力でこたえて作るときの喜びに満ちた表情、そのチーズバーガーを血まみれの汚れた手で頬張るアニャの美しさと食べることの喜び。高級料理の中身が蘊蓄ばかりで、その実虚構の上に成り立っていることを存分にみせながら、最後のいかにもアメリカンなチーズバーガーにつながっていくシーンは示唆的で本当に見事です。それにしても、ミンチ肉を押しつぶして焼く、あのアメリカンなバーガーのスタイルは日本のハンバーガーとは少し違いますね、あれはあれで無茶苦茶美味しそう。スマートホーム買おうかと…。
