京都在住シングルファーザーおじさんのつれづれ雑記帳

京都在住おじさんによる匿名の日記です。ネットのすみっこでひっそりと生きています。ただいまシングルファーザーとして生きてます。備忘録ブログ

擁護施設で暮らす主人公にみる現実の変化、リクドウ雑感②

 以前に「急に凄惨なストーリーのボクシング漫画連載が立て続けにはじまった件について考える」というブログを書いたのだが、その後もずっとリクドウを読んでいて少し考えがまとまってきたので書いておこうと思う。

  

 このリクドウというボクシング漫画の特徴は、何よりも主人公が悲惨な家庭環境から養護施設にはいりそこで育っているというところだ。ヤク中の母親、母と同居する男からのDV、そいつを殺してそして施設へ、というスタート時の展開。この展開を現代を描くボクシング漫画として、その後のストーリーの中でどこまでいかすのだろうか?と思って見ていたが、この養護施設を中心とした設定は主人公の芥生リク、そのライバルの兵動楓、リクのことが好きでリクと同じ児童施設で生活する苗代ユキや、その他施設で暮らす子どもたちとの関係でいきてきていると思う。つまり格差社会と貧困のひろがりが進む中で、養護施設で暮らす主人公によるボクシングという設定が、読み手である私たちにとってリアルなものになってきていると、漫画を読み進める中で僕が感じてきている。

 ボクシング漫画の金字塔は言うまでもなく明日のジョーなわけだが、この漫画は敗戦後の日本の貧困そして復興ということも設定として生きたものとして描かれていた。これが続くボクシング漫画の金字塔、はじめの一歩になると貧困とボクシングという構図は後ろに追いやられることになる。

 そしていまリクドウでボクシング漫画において貧困が再び前にでる。悲惨な家庭、DV、児童養護施設暮らし、はじめの一歩から20年がたち、私たちにとって貧困がずいぶんとリアルのものになったな、とリクドウを読みながら僕は思っている。リクと同じ施設で暮らす仲間たちの多くは、平凡な幸せを望んでいる、しかし格差社会現代社会においてその平凡な幸せはなかなか容易ではない。一方、施設育ちリクは満たされない日常を断ち切るために、単純な向上心ではない別のなにかをもってボクシングにむかっている。

 ストーリーそのものはさほど複雑ではないボクシング漫画であるリクドウだが、漫画は現実を写す鏡であるなぁと認識させられつつある。