京都在住シングルファーザーおじさんのつれづれ雑記帳

京都在住おじさんによる匿名の日記です。ネットのすみっこでひっそりと生きています。ただいまシングルファーザーとして生きてます。備忘録ブログ

映画「渇き」(監督中島哲也、原作深町秋生)の若干のネタバレと雑感

 

 とりあえず最近疲れてまして……疲れた身体とやさぐれた心を癒やすには、もう毒っけのある作品をみるしかないな、ということで視たのはコレです。「渇き」原作深町秋生、監督中島哲也、主演役所広司です。

 みて正解です、相当よかった。子どもには見せたくなく大人にはぜひ見てほしい作品です。最低な主人公、そしてその狂った娘と翻弄される少年少女達、崩壊していく家族、腐った警察権力、最後の最後まで連続する救いようのない展開をみせられるわけです。しかしそれでこそ残されたもの=視聴者には救いはあります。

 以外、簡単なネタバレ含みます。

 主人公の中年刑事藤島は妻の不倫相手を半殺しにして刑事失職、警備会社に勤務しているところを殺人事件に巻き込まれます。ほぼ時を同じくして起こる別れた妻と暮らしている娘の加奈子の失踪を妻の依頼により捜査をはじめます。こうさらっと書くと主演の役所広司が娘と別れた元妻を今も想う父親の姿が誰にも浮かぶわけですが、実態はゲスくかつすぐ暴力を振るい相手を恫喝するイカれた中年刑事役を役所広司が徹底して好演です。好感度の高い自分のイメージをすべてぶち壊すかのようなこの役を実に生き生きと役所広司が演じています。中年刑事藤島の脳内以外では最初から最後まで家庭は壊れていて修復など不能であります。いやそんな温かい家庭など最初から虚構です。

 物語のもう1つの軸、それは三年前、この物語のもう一人の主人公である加奈子の同級生の「僕」です。加奈子の真実を知らないままそこに近づいたのは、主人公とこの「僕」です。

 劇中を通して暴力に次ぐ暴力です。時にはポップに、時にはシリアスに、きちんと暴力の暴力性を正面から描きますが、スピード感があるため、見ている側にそこまで考える暇をあたえさせません。このあたりがこの映画の面白さだと感じました。小説だともっとねっとりしているんだと思います。そして映画全体として細かい部分のリアリティなどは視聴者に考える間も与えず一気にみせる好作品です。もちろんそれは原作のストーリーがしっかりしているからであることは間違いありません。僕自身は映画を見ただけでほぼストーリーをきちんと把握できる作品でした、藤島警部が進行する現在と「僕」が進行する3年前の時系列がある、ということにだけ気づけば大丈夫です。

 なんというか「渇き」をみて、自分のいる現実の虚構とそして良さの両方が確認できました。深町先生、中島監督、ありがとうございます。